高専大改造

※この記事は苫小牧高専アドベントカレンダー2017 15日目の記事です。

どうも、すとーんりばーです。
苫小牧高専アドベントカレンダー2017を開催すると聞いて「僕も一応ブログ持ってるけど投稿してないから幽霊だしこのままやり過ごせるかな……」などと不遜なことを思っていた。

ところが、僕が別のアドベントカレンダーの宣伝及び参加募集をTwitterで行ってしまったが為に、持っているだけで全く活動していないブログの存在が露呈しアドベントカレンダーの参加要請を送りつけられた。

人に参加要請をしておいてなんだという話ではあるのだけど、僕自身、昨年までアドベントカレンダーなんてものに参加した経験がなく1つ参加するだけでネタ切れみたいな所があった。とりあえず参加するとも参加しないともつかない「はい」とだけ返信して、またやり過ごそうとしたところ「苫小牧高専についてありのままかいていいよ」的なことをこのアドベントカレンダーの首謀者様から言われてしまったため「ほう、そちら方面を書けと申されますか。」みたいな気持ちで「はーい」と引き受けた。

それでは本文をば。

僕が苫小牧高専に入学して約2年が経過した。高専が本科5年制の学校であることを考えればまだまだ高専生活ビギナーのひよっ子ということになるのかも知れないが、2年間でも高専に対して色々と感じることが在った。

2016年、苫小牧高専には”学科再編”というビッグイベントが到来していた。それは、「情報、電気、機械、化学、環境の5学科を”創造工学科”という統合学科に融合させ、各学科の専門分野は創造工学科〇〇系という扱いにする」ものだった。単純に区分を変えただけではなく、1年生は学科配属しない混合学級とし、2年から希望した専門系に成績順で配属されるシステムとなっている。

そんな苫小牧高専大改造のその年、めでたく創造工学科1期生として僕は入学した。確かその頃の僕は今よりも希望に溢れた目をした新入生だったと思う。今では教室で静かにノートパソコンと向き合っている僕が、"ほぼ初対面の人間達"と"ピース"をして写っている写真があるのだから多分間違いない。

たった2年で何があったのかという話になるが、別に僕がどう変わったわけでもないと思う。その頃から僕はプログラミング趣味のエンジニア志望の学生だったし、今もそうだ。変わったものといえば、高専における周りの人間への認識だと思う。

入学直後の僕は、わざわざ普通高校に行かず高専に入ってくるような人間はある程度目的と言うか漠然とでもやりたいことがあって集まってきてるんだろうと思っていた。特に考えることがなかったり、普通に有名大に進学したいと考えているのなら高専という選択肢を採る事も無いだろうと思っていたからだ。ならばこそわざわざ高専に来る人間は技術を学びたくて集まってきてるんだすごいなあと希望を持っていた。

ここまでの文の雰囲気から現実はそうでなかったことが想像できるとは思うけれど、当時僕がその現実を認識するには意外と時間が掛かった。それにはいくつか理由が在る。まあだいたい、「教室でPC開いてる人が居ないのは教室じゃ開いちゃいけないルールなのかな?」と思っていた時期が在るとか、「1年制段階では学科の別れていない混合学級である”創造工学科”だから情報してるプログラミング趣味のような人はうちのクラスにたまたま集まってないのかな?」とかポジティヴに考えていた節があったとかそんなところだ。(情報に配属されてみたら、1年生の頃僕が居たクラスの人の割合が一番多かったというオチ付きである。)

とはいえ、少なくとも半年が経過した頃には僕も現実を見ていたと思う。高専に入学してくる人間というのは別に専門技術を学びたくてやってくる人間ばかりではなくて、進学校の滑り止めで受けて進学校落ちたとか、就職率が高いからとかそんな入学者が多数、本当に多数いるのだ。

この就職率が高いというのは高専が入学者募集で前面に押し出している謳い文句であるが、僕はこれはミステリー小説宛らの論述トリックだと思っている。有名大学よりも就職率が高くて100%に近いとか言うけれど、高専は理系専門なのに大学の文系理系綯い交ぜにして高いと言ってどうするという話だ。軽く調べても一定以上レベルの理系学部であれば90%~は堅いようなので比較対象を考えるべきである。そもそもの話就職率よりも専門性をもっと押し出してほしい。なんというか、「専門性!!専門性!!専門性!!大学理系学部より就職率平均数ポイント高い!」くらいに抑えてほしいものだ。まあ、実際就職率は高いし、大学だってそういうアピールをする所が在るのだろうから高専に限った話ではないが、高校入学年齢から専門教育を施す機関なのだから、専門性アピールを優先してほしいという僕の個人的な見解である。それはそうとミステリー小説に大変失礼なことを言ってしまった気がする。

話が大幅にそれてしまったけれど、そんなこんなで高専には専門に別に興味のない人間が大量に入学してくる。そして、おそらく創造工学科という科はそういう人間が大量に入学してくることを前提として作られた科である。違うのかもしれないが、現状確かにそういうものとして機能している。「専門とかよくわからな〜いでも高専は就職率が〜」でなぜか高専に入ってきたハッピーヒューマンに1年間という研修期間を与え、好きな所選びましょうねということだ。

まあ、これは在る意味正しいと思うし、むしろ無条件に創造工学科を批判している人のほうがちょっとと思う。2年生になって情報系になったら1年生の頃のクラスメイトにはいたウェイ系の人種が消滅してeverybody OTAKUって感じになったので大層優秀なフィルター機能だ。

じゃあ僕は何が不満だったのかと言うと、所謂"やっていき"に溢れる友達みたいなものが出来なかったことだ。とりあえず創造工学科フィルターで選別されてオタクっぽい人間が情報系に詰められたけれど、フィルターを通る前の集団の多数が専門に興味を示していなかったという事実は変わらないのだから、いくら傾向的にフィルタリングされても誰かが何か作り出したり自主的にプログラミング学習を始めたりはしないのだ。結局の所、ウェーイとか言って教室でうるさかった集団がスマホゲームでデュフフなうるさい集団に変化しただけだ。人間本質的なところは同じなのかもしれない。

クラスメイトに言語だとかエディタだとかディストロがどうとかだとかの話をしても、9割9分「よくわかんないや」「難しいことしてるね」「(ソースコードを見て)えっきもい」である。これを書いていてクラスメイトの声で脳内再生されるのが悲しい。「いや君の所属してる系の専門だからこれ、そんな客観視じゃなくて興味を示す立場になれよ」としか言いようがない。

勿論、プログラミング出来る人間としか交友関係を築かないみたいなアクロバティックな人間関係はしていないので、プログラミングとは関係のない所でできた数少ない友人と話したり遊びに行ったりするのは本当に楽しかったし、高専に現時点では既存知識以上の専門性を求められないことからその友人たちのためだけに登校しているみたいな時期もあった。僕が不登校になってないのはその友人たちのお陰だと思うので本当に感謝している。(流れ的に過去の人みたいになっちゃったけど今も仲いいよ)
ただ、僕は「専門的な知識を身につけることができて、それを身に着けたいと思う人が沢山いる」と思って高専に入学してきてしまったので、プログラミングや関連技術について対等に楽しくお話できる友人が居ないというのは結構寂しいものだった。(残念ながらこれも今もだよ)

だがここ最近、少しだけいい風が生まれ始めていると感じる部分が在る。今年のはじめ、僕はソフトウェアテクノロジー部に入部した。その部活は去年、当時の1年生(つまり僕の世代)向けのC言語の基礎講座とかRubyちょっと触ってみるとかの活動をしていたらしいけれど、その講座には個人的に受ける必要性を感じなかったので入部していなかった部活だった。1年生の僕はなんとなく、「情報系の部活動なんだから安定してそういう講座はやってるんでしょ。まあでもそれでこんな感じだからそんなでもないんでしょ。」と小生意気に考えていたけれど、実はそうではなかったらしい。

その講座というのはこのアドベントカレンダーの首謀者様が部活の場を使って開いていた講座で、慣習的に1年生に安定した教育が施されているわけではないらしかった。教育が安定していない技術系部活動ってやぱいのではないかという話でも在るが、教育が行われた結果か今年に入ってその講座の効果が発現してきていると思われるクラスメイトが数人現れた。前例がないので、今までの年度でももし講座等が開かれれば同じ現象が起こったのか、上で批判がましいことを言ってしまった創造工学科が一応正しいフィルターとしても働いているのかはわからないが。

僕はどこでプログラミングが趣味になったのかは覚えていないし、発端は小学生の頃に触っていたDSiのダウンロードソフト「プチコン」だったと思うのでかなり昔の話になってしまって遡ることも出来ない。そこにどんなきっかけがあったかわからないし、元々そっちの色が濃い人間だったのかもしれない。僕は中学生活の大半をPC弄りに費やし、ほとんど不登校のような時期もあった。

だけれども、そんな奇異な生活を送らずにごく普通に中学校生活を送り、既に何かが出来るわけじゃないけど「プログラミングとかそういうのやってみたいと思った」「パソコンを触って色々したいと思った」から高専に来た人間もほんの一握り程度は居たようだった。

そんな人たちが普通に高専生活送ったとしても、高専の2年で身につくのはC言語の基礎構文に毛が生えた程度なので、その内容を完璧に身に着けたとしても具体的に何かが作れるわけではない。だからよくわからずそのまま沈んでいってしまう。だが、そこに部活動で上からの技術講座が加わったことでやっていき精神に火がついた人が現れたのだと思う。クラスにそんな雰囲気が多少なりとも漂い始めたことで危機感を感じたのか興味をそそられたのか、「なんかやりはじめたい」と言い出す人も居て嬉しい。

現段階ではまだ、あのエディタのあのプラグインがみたいな話をできる同級生はいないけれど、そんな人が生まれてきたらいいなという考えで僕も講座を開き始めた。前述のソフトウェアテクノロジー部とクラスメイトの一部に声を掛けたら5,6人が僕の講座を受けに自主的に集まってくれて、「学内で勉強会を開いて人が集まるところまで先輩が引っ張り上げてくれたんだなあ」と少しだけ感傷的になった。集まってくれた人たちが"すとりば会"なんて言い出していて、よくよく名前だけ聞くと何かの宗教みたいになっているけれど、ゆったり技術を宣教していけたらいいなと思っている。資料作り頑張りたい。

自分以外に専門的なことをやりたいと思っている人間がいないという考えは思い上がりも甚だしい物で、(自分で始めてほしいという考えを捨てたわけではないけど)やってないだけで興味の在る人をこちらに寄せて、環境を作り変えてしまえばいいということだった。勿論専門に興味を持っている人間が沢山いるわけではないので、クラスの中で専門を嫌ったり、無知からの勘違いで専門教員に文句を言って騒ぐグループが消えるわけではないが、専門が好きで色々やっている側も増えていったら気にする必要も無くなるだろう。こっちが1人で向こうが沢山だから「高専はだめだ」と思うのであって、こっちも複数あっちも複数なら「あっちの人たちはとりあえず就職してもその後の人生どうするんだろうね楽しいのかな」と話のネタになるだけだからだ。

ただし、飽くまでも僕は技術を学びに高専に来たのであって、今は学年的に高専が教えてくれなくとも時間があれば自分で技術を身に着けに行きたいので、いま僕が講座という形で技術を教えている同級生の人たちも早い所独立して僕の知らない分野のことを逆に教えに来たり、そっちの話で盛り上がったりできるようになってほしいな、とは思う。だから、みなさん僕のためにどうぞよろしくお願いします。

そこまで長く書くつもりじゃなかったのに結構な文量になってしまった。これでもまだ書きたい不満点と不満点と不満点と良い点がわんさかとあるけれど、それはまた別の機会に書くかもしれない。 なんだか上から目線で物を言っているような文章になっている箇所がありますが、そんな意図は無いのであしからず。

好き勝手に講座を開きたいと思ったら開けるような環境を整えてくださった先輩、本当にありがとうございます。

僕も周りの環境を居心地の良いものにしつつ自分ももっと技術力を高められるようにしていきたい。

ところで、苫小牧高専ってなんで青いんだろうね。