自分で学生サークルを立ち上げてみた

※この記事は苫小牧高専アドベントカレンダー2018 3日目の記事です。

先月公開されて、結構初期に登録したアドベントカレンダーですが、いつの間にか公開日直前になっていたので焦って書いています。なお公開日には中間試験があります。 何を書こうかと思ったものですが、お気持ち的文章はつい最近書いてしまったので、安直に今年1年間†情報系学生†として生活してきてやったことを書くことにします。

いくつかネタとして思いつくことがありますが、今年一年を通して僕の生活に大きな影響を与えた事柄として、ある学生サークルの結成があります。これは2年生の春休みに僕が直接声をかけて始めた活動です。内容としては総合的なゲーム開発を行うサークルで、活動開始時のメンバーは9人でした。せっかく高専にいるのだから、情報系だけでなく機械や環境といった他系の人間も集めて一緒にものを作ってみたいと思って立ち上げたサークルでした。勿論作業内容が直接自分の専門系と関係する必要はなく、絵を書いていたり空想(妄想?)が好きだったり、自分のやりたいことをやって結果としてゲームという形の成果が出せたら良いなと考えていました。また、部活や教室で"課題"という形態を取った作業が発生するよりも、創作を通して、はっきりとした目的のもと作業をしてもらうことができれば、より気軽に楽しくメンバーとなった人たちの各種技術の向上に繋げることができるのではないかとも考えていました。僕自身としても、普段住んでいる分野はゲーム制作という感じのレイヤーではないので、開発面でもある意味では挑戦でした。

そんな思想で立ち上げたサークルですが、これらはやはり理想的な物であり、実際の運用では様々な問題が発生しました。 一番大きかったのは、人間の管理です。”ゲームを作る”という楽しげな理念のもとに人を集めてはいますが、結局の所何を作るにしてもやることは作業であり、勉強です。本来このようなサークル活動や、更に言えば実務での開発というのは、すでに一定の技能が認められる人間が集まって作業を行うものですが、上記のような理念で結成を行ったため、集まったメンバーの中で開発に使うツールをちゃんと扱えたり、実際にシナリオを書いたことがあったり、ゲーム向けのイラストを書いたことのある人は一人もいませんでした。ごく情報系の分野に限っては僕が教えられることもありましたが、体系的に講座形式で教えるのはやはり困難ですし、なによりそれでは僕が作業したほうが早いです。 これで発生してくる問題というのは、メンバーの飽きであり、面倒だから作業したくないという精神的問題です。そもそもこのようなことにならないようにサークルという形を取ったのですが、やはり現実は厳しいです。更に加えて言うと、これはただ僕が声をかけて、”やりたい”と言った人が集まっているだけなわけなので、言ってしまえば何の報酬もありません。もし部活動であれば社会的なアレによって若干の強制力が生まれますが、それも無く報酬もなく、つまり僕にはメンバーに作業を強制する権限がまったくもってありません。結果として、当初9人だったメンバーは活動開始時点から2人の離脱があり、7人となっていました。これは離脱を表明してくれた人だけのカウントですので、残り7人で見ても現在実際に制作に参加しているメンバーはほんの数名となります。

この離脱や事実上作業をしない人員が生まれてしまった原因として、僕のマネジメント能力の欠如と知識不足が挙げられると考えています。よく、「得意不得意があるから人が集まってもの作ればいい」というようなことが言われます。実際にその通りであり、一応表面上はこの日本という国もこのシステムで回っているわけですが、本当にそれが機能しているのかというと疑問な気がします。なぜなら、本当に効率的にこのチーム運営が成り立つためには、マネジメントを行う人間が各方面すべての分野において一定の知識を有している必要があるからです。僕は情報系のことはちょっとだけ分かりますが、絵を書くことはできませんし、モデリングも教えられるほどはわかりません。これでは、「こんなことをやってほしい」というぼんやりとした概念で、依頼ではなく”お願い”をするしかありません。何度僕がもっと多才で万能だったらと考えたかわかりません。でも、もし万能だったらやっぱり僕が全部一人で作ればよくなってしまうのです。これでは作業を依頼された側も作業がしにくいに違いなく、ただでさえコストのかかる作業がより大変な物となってしまいます。(まあ、それでも大変ながら作業し続けてくれている人もいるので本当に難しいですが)

さらに、例え形式上サークルというものが維持されたところで、この形態で運営することができるのは本来的なクリエイティブ集団ではありません。チームを組んで”クリエイティブ”をやりたいと思ったとき、それは各分野に特化した人間が存在することが前提となっています。僕のように学校という狭い空間で半ば乱択的に集めたメンバーでは、前述のような理由も相まってどうしても限界が生まれてしまいます。(決して責めているわけではありません) 僕が理想とする、本来的にやりたいクリエイティブの形というのは、自分がある程度できること(僕の場合、プログラミング、シナリオ作成、ちょっとだけモデリング)と自分にはできないことがあり、その自分には出来ないことを、絶対的な水準で見たときに自分と同じくらいある事柄について突出しているメンバーに補完してもらう形です。文章が下手で良くわからない表現になってしまいましたが、要するに「自分がある分野ができるのと同じかそれ以上くらい、別のある分野で突出したメンバーでチームを組んで制作がやりたい」ということです。

これは、きっと物凄く楽しいことです。僕としては、こんな創作ができれば、他の全てはどうでもいい。必要最低限生きていくだけの環境と、このクリエイティブさえできればそれでいい。というくらいのレベルで、こういうことがやりたいのです。 とはいえ、この資本主義の現代ではこれは不可能に近いほど難しいことであり、僕の能力水準ではこの思想だけでそのレベルの人間を集めることはできません。それができないから今回のように周りの人間を集めて教育を含めて創作をやるという形を取ったのですが、やはり厳しいものがあります。集めた人間が皆、創作に対して自分と同じ程度の熱量を持っていればなんの問題もないのですが、そもそも自分がそういった選別を行うような集め方をしていないのだから当然そうはなりません。(逆に、僕の環境で選別を行ったら人が消えます) こうなってしまったとき、自分が理想とするチームでのクリエイティブというのは瓦解し、僕によるメンタリング活動へと変化してしまうのです。「自分にはできないから、君が比較的得意なこの分野のこれを学んで、できるようになって、ものを作りましょう」といったところで、その事柄にかける熱量と時間がどうしても自分のほうが上回ってしまい、先に自分のほうができるようになってしまうということを何度もやっています。これではなんの意味もないのです。僕は、人と創作がやりたいのです。 ……絶対に解決できないことに熱が入って文量を増やしてしまったので、もう少し解決可能な話をしましょう。

もう一つ存在する問題として、チーム内での情報共有の難しさです。弊サークルでは、プログラム、シナリオ、グラフィックといった大まかな作業分野で分割を行い作業を進めています。それぞれのチームで定期的に会議を行い、一緒に作業を行ったり、個人で行った作業の全体への統合を行ったりしています。しかし、我々は学生であり、これは仕事ではないので、開催されるすべての会議に参加する義務はなく、こちらも「できれば参加してほしい」というお願いしかできません。これにより、実務としてのチーム開発よりも、同一チーム内でのメンバー間の情報把握に差が生まれてしまいます。これが先程述べたチーム間では更に悪化して、そもそもどんなシナリオなんだかわからないグラフィックの人が現れるといったような事になってしまいます。こうなってくると”ゲームを作っている”という感覚ではなく、ただただ作業をさせられているだけになってきますので、更に作業のモチベーションが悪化します。

そんなこんなで、細々とでも作業を継続して行える段階に持っていくまでに非常に苦労しました。学校に関連したチーム作業とかであればまだメンバーも「一応やらないとな」という状態になりやすいのですが、全く”やる必要のない”作業であるという問題を解決するのは本当に難しい気がします。

問題点はまだまだありますが、問題ばかり挙げていても仕方がないので、ここまで述べた問題を踏まえた上で現在サークルがどのような運営形態になっているか軽く紹介したいと思います。

まず、情報共有の欠如を受けて設立したのが、サークル内ナレッジです。いい感じのオンプレで使えるOSSナレッジないかと探してみたところ、GROWIというWikiシステムが出てきたため、たまたまあった我が家のサーバーにDockerで突っ込んで運用をはじめました。 f:id:strv13570:20181202022452p:plain マークダウンで気軽に書けて、簡単な設定で更新内容がSlackに通知されるので、非常に便利です。ここにその時点での決定事項や会議の議事録を残すことで、実際に会議に参加しなかった人でも前回簡単に何をやったのかがわかるようになっています。(とはいえ、それを読んでくれないと意味がないですが) 開発ツールについてや素材の落ちている便利サイトなどの技術的な情報共有も行われているので、プログラムなどの班でも重宝しています。現時点で500件ちょっとのページがあり、趣味の制作にしてはなかなかの量ではないでしょうか。

また、生産されたデータや資料の共有を行うため、クラウドストレージも用意しました。こちらもOSSで落ちていたNextcloudを利用しています。最近HDDを買ってきてストレージを増強したので、全体で4TBくらいまでいけます。 f:id:strv13570:20181202023757p:plain Nextcloudは非常に高機能なようで、まだまだ使いこなせていませんがこれはプログラム班を中心にかなり活用されています。

そして、開発を行うためのGitリポジトリとしてGitBucketも運用しています。こちらはおなじみですね。 f:id:strv13570:20181202024251p:plain 開発に利用しているUE4の推奨バージョン管理システムSubversionであるという問題があり、最初は大丈夫なのかと思ったのですがGitでもちゃんと設定を行えばなんとかなっています。

他にもいくつかのツールを利用して、運営を効率化することで先程まで挙げていた問題が解決された……かというとそうでもないのですが、少なくともちゃんと利用されていますし、8ヶ月ほどに渡ってこれらを用いた活動が継続できているので、一定の効果はあったのかなあと思っています。何より情報が常に整理された状態で上がっているため、作業が非常にやりやすくなっています。「ナレッジがなかったらいまの作業成り立ってないよなー」とか思ってくれてるメンバーがいたら僕としては嬉しいのですが。

話がごちゃごちゃとしてきたのでまとめると、全く強制力のない趣味でのチーム開発はとっても難しいよという話です。特にゲームのようなあらゆる分野を要求してくるものでは難易度が上がります。上で述べた運用上の問題点はまだ全然解決していませんし、これからも完全に解決されることはないと思っています。それでも、この8ヶ月間でこの制作によって生み出されたものは既にかなりの情報量があります。また、参加前はほぼ学校以外でプログラムの勉強をすることがなかったメンバーが「早く学校終わって続きやりたい」とか言い出したり、それ専用のTwitterアカウントを作り出したりしているのを見るととても嬉しいです。僕自身も、一人で勉強したり開発したりしていた時と違って技術的な共通の話題で話せる場ができましたし、シナリオ会議に参加して自分たちで作っているゲームの世界を考えるのは非常に楽しいです。問題として挙げた内容も、学校でやらされる意味があるのか無いのかよくわからない体面上だけのグループワークなんかでは絶対に経験できないことだったので、今後似たようなことをすることがあればノウハウとして活用していきたいと考えています。

さて、ここまで長々と書きましたが、ちょっとだけ制作についてのさせてください。 まず、ゲーム名は非公開です。これは、ゲームの開発ががもう少し進んで、その紹介ページを公開するのと同じタイミングでWebページ含めても公開しようと考えているからです。 また、制作しているゲームのジャンルはRPGです。結構ちゃんとしたシナリオが存在する系のゲームなので、公開前の今ここで具体的な書くのはただのネタバレです。

……お前は紹介をするんじゃなかったのかという感じですが、割と大きなものを作っています。今現在、グラフィック(主にモデリング)を中心に人員が不足しています。経験者未経験者問いませんので、「なんかゲームとか作ってみたいけど……?」みたいな人、いませんか!? 今年は本当に色々なことがあったので、あと3日分くらい記事書きたい程度には書きたいことがたくさんあるのですが、今回はこんな感じの記事を書かせていただきました。 明日は苫小牧高専OBの先輩のふっくんさんの記事です。楽しみにしています。